THE WIND SYMPHONY
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原題:sinfonia no.1 marea negra
機Despertar en las"Rías Baixas" 供El Prestige
掘Marea Negra 検Marea Blanca
作曲者:アントン・アルカルデ・ロドリゲス(Anton Alcalde Rodriguez)
時間: 第1楽章 3分40秒 第2楽章 5分00秒
第3楽章 4分50秒 第4楽章 4分10秒
出版社:自費出版
価格:150ユーロ(日本に輸入できるか不明)
難易度:★★★★★★★☆☆☆
編成:大編成
参考音源:youtubeのみ→
※情報提供&リクエストありがとうございます!
コーヒーを発見した人
おそらくこの作品とこの作曲家を知っておられる方はほとんどいないのではないでしょうか。管理人も情報提供をいただくまで知りませんでした。スペインの作曲家と言えば"交響曲第2番「キリストの受難」"や"セレモニアル"などで知名度を上げたF.フェルランか、"ポリフェーモ"で知られるA.V.カステルス、"交響曲第1番「アスガルド」"で知られるT.A.バルベランなどが思い浮かびますが、まだまだスペインの新しい風は確かに吹いているようです。今回ご紹介いたします作曲家は、なんと1992年生まれ。まだ若干20歳の作曲家で、現在も学生として研鑽をつまれておられる方のようです。しかしながらyoutubeにて積極的に自作の動画をアップし、自費 出版(?)という形で出版されている模様。なかなか精力的な方のようです。ぶっちゃけた話、今回紹介する作品"交響曲第1番「マレア・ネグラ」"は、演奏時間18分という大作には違いありませんが、では名作かと言われると、やはりまだまだ若さの目立つ作品だと思います。しかし、日本の20歳の作曲家にこういう作品を書く人はいるでしょうか。音圧で吹き飛びそうな分厚い書法、きらびやかな金管群、すさまじい量の打楽器群、上に下に幅広い音域、そしてまるで映画音楽を彷彿とさせる壮大な楽想。確かに最近の邦人作品もこういう風潮は増えたにせよ、なんというか「本場」を思わせるような書法はやはり日本人の20歳とは違うものがあります。誤解を恐れずに言えば、F.フェルランやB.ピクールを主体にしつつ、清水大輔 とB.アッペルモントを混ぜたような作風、と言えば「おっ!ちょっと興味あるかも」という方もおられるのでは?いくつかある作品の中から、最も聴きやすく、この新しい作曲家を理解しやすい先述の"交響曲第1番「マレア・ネグラ」"をレビュー致します。
自動車ショーで車の上に女性の写真
まずこの曲については描写しているものの説明から入らねばなりません。「マレア・ネグラ」とはスペイン語で、あえて日本語に訳すとすれば「黒い潮」となります。あるいはもうその本質をついて「油膜」と訳すこともできるでしょう。2002年11月13日、スペインはガリシア地方の海岸で発生した大型重油タンカーのプレステージ号の重油流出事件。当時日本でも報道はされていたように思います。悪天候のため、77000トンもの重油を積んだタンカーが座礁、沈没した事件です。資料によって数量はちがうので一概には言えませんが、77000トンのうちの半分以上が海面に流出し、海はドス黒い油膜に覆われた「死の海」と化しました。被害はポルトガル北部からフ� �ンス南部にまで及び、その地方に住む人々はもちろん、何よりも海に棲む動物たちが「黒い潮」に苦しめられました。スペインの鳥類学会によれば、実に4万羽以上の海鳥たちが死滅したと言われており、中でもオオハシウミガラスはもっとも影響を受け、今はどうか分かりませんがスペインでは絶滅の危機に瀕したのだそう。世界中で定期的に(そもそもこんなことが定期的では困るのですが)発生する、タンカーの座礁。本作は描写的にこの事件を描いております。以下、斜体字は作曲者のプログラムノートの一部を管理人の拙い英語力で意訳し、さらに原文にはない表現を部分的に管理人が言葉を補っております。間違っていたらゴメンナサイ!
作品は「海のキャラクター」ともいうべき、音楽的・象徴的に分けられている「 核となる旋律」を基に展開されていく。たとえば旋律線のトップ・ノートだけをなぞっていくと波の形が得られるようになっており、それぞれの場面における「海のキャラクター」を「核となる旋律」が表情豊かに描いているのである。また、いくつかの旋律にはA.V.カステルス(※"ポリフェーモ"の作曲者)の吹奏楽作品"交響曲第1番「ムルタの谷」"や"シンフォニエッタ第3番"から引用されている。さらに各楽章で"Alborada Galega"や"Galician anthem by Pascual Veiga"や"Negra Sombra by Juan Montes"といった、ガリシア地方の伝統音楽からも引用されている。以上のことを踏まえて、演奏する際にはイメージを呼び起こし、音楽を表現してもらいたい。
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Vラ減量センター
交響曲のプロローグ的な楽章。リアス・バイシャスとはスペイン北西部の地域の名前で、ワインの産地として有名である。リアスはこの地域に見られる美しい「リアス式海岸」のリアス、バイシャスは「下部」という意味。夜の帳から目覚めるリアス・バイシャスの情景を描写し、そこへプレステージ号が現れる―――。
やや重苦しくもある暗い音色から、それを切り裂くように鋭く現れるホルンとウィップの一打によりスタート。水笛をはじめとする打楽器による擬音から、ホルンの印象的な旋律が登場します。続くは鍵盤楽器と木管楽器による弱奏。イングリッシュホルンの断片を経てオーボエによる調性的な主題の提示へと移ります。ここまでだけでも様々な打楽器が登場し、色彩的なアピールが行われますね。並々ならぬ打楽器への情熱と創意工夫の跡が見て取れます。やがて分厚い書法による朗々としたメロディ、繊細な響きを伴ったソロが続きます。ここはとても分かりやすくて、とても印象的。ピアノの扱い方も上手いですね。やがて金管楽器による重たい足取りから、映画音楽を思わせる壮大な楽想が出てきます。この辺はフェルランやメ� �ロを思わせます。美しい景色の描写なのにどこか重苦しさと暗さを感じさせるのは、その後の事故を予感させるものでしょうか。そのまま強奏による不協和音とともに第1楽章は唐突に幕を閉じます。
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エンジンルーム、大嵐、事故のフラッシュバック。悲しみの渦に飲まれる「リアス・バイシャス」に思いを寄せる。プレステージ号は座礁し、海に沈み始めると、やがてそのまま「黒い潮」に飲まれて消えてしまう―――。
ボンゴによる16ビートのような細かいリズムからスタート。打楽器アンサンブルによってプレステージ号の気忙しいエンジンルームが描写されます。ちょっとだけ、マッキーの"タービン"ぽくもあるような。やがてホルンの機械音を模したような音からトランペットの華々しい音色が導かれ、リズミカルなパッセージがトロンボーンによって奏されます。この部分、フェルランっぽいですねえ。トランペット、きっついですなあ。躍動感あふれる重厚なパッセージの後はやや憂いのある暗さを湛えたサウンドに無機質なサスペンデッドシンバル上の明るいピッコロ・オーボエなど、めまぐるしく表情を変えるとその頂点で金管による壮大かつ重厚なメロディが登場します。いいですね、ここ� �っごくカッコイイ!清水大輔が好んで使うような音使いです。その後はやや回帰を見せたのち、不気味な不協和音と凶悪で重苦しいリズムに支配された緊張感あふれる展開へ。さしづめ「プレステージ号の威容から悲劇へ」といったところでしょうか。吠えるホルン、ドッカドッカ暴れる直管楽器、地響きのようにうねる低音楽器。いやあ、映画音楽の戦闘シーンのような凶暴さです。頂点ではひきずるように不協和音をのたうちまわせ、最後はそのテンション維持したまま、低音楽器のトゥッティで幕を閉じます。
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マレア・ネグラ−黒い潮。沈黙する海岸。悲劇を2度と繰り返してはならない。
打楽器や鍵盤楽器、管楽器の吹き伸ばしと断片、シンセサイザーによって、無機質に荒涼とした情景が、 儚げに、寂しげに描写されます。ベタと言えばベタな表現方法ですが、効果的な描写であります。油膜に包まれ、死の海と化したガリシア海岸の悲哀は、旋律以外にも、背景を飾る断片的な音の素材からひしひしと伝わってきます。旋律が最後まで吹ききられず、どの楽器も中途半端に脱落していくさまは、まさに命のつきかけるような弱さを感じさせますね。やがて冒頭の壮大なメロディが小さく再現され、自己の暗示が現実のものとなったことを訴えかけると、オーボエのソロに続いて、悲しみの渦が小さなものから大きな奔流へと姿を変え、ffでその嘆きが歌われます。最後は消え入るような鍵盤楽器の断片で静かに悲しみを訴えかけて幕を閉じます。
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マレア・ブランカ−白い潮。流出した重油は少しずつ浄化されていく。人々の手によって、自然の力によって。取り戻した「マレア・ブランカ」への讃歌。新しき日々に思いを寄せて。
短2度の響きが印象的な金管楽器のトゥッティからスタート。黒い潮の隙間から、ほんのわずかな希望が顔を覗かせるようにオーボエの旋律が歌われますが、それもまた金管楽器のトゥッティにかき消されます。もう死の海を救う希望はないのか…そこへ現れるのはピアノのソロによる希望のメロディ。事故は起きてしまった…しかし、人々のボランティア、そして自然の自浄作用、様々な力によって少しずつ「マレア・ネグラ」が「マレア・ブランカ」を取り戻すように。旋律もまた希望のものへと姿を変えていきます。やや唐突な展開ではありますが、訴求力はなかなか。やがて全楽器とスネアドラムの力強いリズムによって復活への讃歌が歌われます。クレッシェンドの先には盛大なる金管群のファンファーレの嵐、打楽器群の� �烈なリズムの刻み。吠えまくるホルンに彩られ、唇の血管が何本も切れそうな壮大かつ重厚なエンディングへ。ここまできたらあとはノンストップで、クレッシェンド・オル・フィーネ!ひたすら盛り上げに盛り上げ、最後は音圧の嵐の中から壮大華麗なCのメジャーコードが登場して、感動のクライマックスとなります。
正直、作品そのものはお世辞にもよくできた作品とは言えないと思います。どちらかと言えばアイデアは豊富だけれども若さとパワーで押し切った感じは否めないでしょう。しかし確かにバンダ・シンフォニカの文化が根付くスペインの新しき才能の原石的なきらめきは強く感じられます。きっと10年後には本当の意味での大作を残してくれるはず。そんな期待を抱いてしまうのもまた確かなのです。それに日本 の若者はこういった若さとパワーで押し切るような作品は案外と少ないもの。良い意味で刺激になると思います。今回のこの作品はまだまだ若いですが、しかしどこか期待させてしまう若さでもあるのです。こういった新しい才能にも、注目をしていきたいですね。
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